オークションなどでは、絵柄のある文字盤ということで、「七宝焼きの文字盤」などとして表記されていることがあります。
デジタルの写真印刷が普及し始めた頃から、数は少ないながらも出回ることがあったものです。
特に2014年頃から、数多く出回るようになったもので、ご購入の際にはご注意が必要です。
【 偽造文字盤の実物 】
写真をご覧いただければお分かりいただける通り、写真では一見しても偽物だとわかりません。
【 偽造文字盤の拡大 】
【 偽造文字盤の裏面 】
中央の穴から、表側に貼られたシールが見えています。
偽造方法としては様々な方法が見られますが、よくある手法としては、アルミ板などの金属板の上にデジタル印刷した絵柄を貼り付けてあります。
印刷の程度によっては非常に精密にできているものや、デジタル印刷の質感がすぐにわかるものまで程度もさまざまです。
本物の陶製の文字盤のように、印刷紙にもツヤがあるため、知識の無い方、同系の懐中時計をご覧いただいたことのない方なら、写真からではわからないことはもちろん、実物も一見しただけでは判断のつきにくいものです。
偽造程度の低いものは、作り自体も非常に悪く、文字盤の裏側にある機械に留めるための足が無いのはもちろんですが、中央の針を取り付ける部分の穴、秒針を取り付けるための穴の位置も正確ではなく、そのため文字盤も機械に貼り付けや接着をされていることがほとんどです。
【 状況 】
特にオークションや個人販売者で、珍しい図柄の文字盤・七宝焼きとして、通常の懐中時計より高く売られているようです。
販売している側も知識が無く、偽造品だと知らずに販売しているケースもあります。
印字されている図柄は、ここで紹介しているようなアンティーク調のものから、昔の看板を思わせるようなアメリカ調のデザインまで様々です。
懐中時計の作られた年代には存在しなかったものや、明らかに懐中時計とは年代の違う絵柄が印刷されていることもあります。
【 見解 】
懐中時計が作られていた時代には、上記の絵のような特殊な絵柄の文字盤はほとんどありません。
写真だけでは、偽物だと見抜くことは難しいものですが、絵柄が文字盤全面もしくは大部分に及んでいることが多いため、文字盤に表示されている数字のインデックス(1・2・3という時間の表示)の上にも絵柄がかぶってしまっている点で、おおむね偽物だと判断できます。
この年代の懐中時計の文字盤には、金や銀などで装飾の施されている文字盤もありますが、偽物の文字盤のように、数字のインデックスの上を絵柄が上塗りするようになっているものはありません。
あくまで文字盤の余白部分や、数字の回りの部分などに、金や銀もしくは宝石を入れて装飾がなされているもので、偽造品のように数字を隠してしまうような作りのものはありません。
文字盤が割れてしまったため、やむを得ずオリジナルに近い状態で復元されることはありますが、このように元の状態とは違った形で作り替えることは偽造品に当たります。
販売の際に、作り直した文字盤が貼り付けられていることが説明されていれば、ご購入者の判断に委ねられますので良心的ですが、何も説明が無く販売されていた場合は、知りながら販売をしているケースまたは販売者も偽造品を見抜くことができないということですから、その出品者やお店からはご購入されないほうが無難です。